ビューティ・コラムcolumn

第16回 ニキビ撲滅大作戦<その1> ビタミンCを徹底的に取ろう!!

今回からニキビがなぜ起こるかを、最近の知見や私の経験を交えて解説しましょう。今まで大勢の皮膚科医や化粧品会社がニキビにビタミンCが有効であると気が付かなかったのは、化粧品や医薬部外品で許されている持続活性型ビタミンCの濃度が、医薬部外品でも3%と低いためでした。

私はもともとシミを治す目的で美白効果を期待してビタミンCの使用を開始しました。持続活性型ビタミンCは天然型のビタミンCに比べて細胞膜レベルで約8倍細胞の中に入りやすいという極めてすぐれた性質を持っています。そして細胞の中で天然型のビタミンCに変換します。私はより多くのビタミンCを皮膚に入れるために、溶解させることが限度一杯の10%のクリームを使用してシミの患者さんに使用したところ、シミだけでなくニキビや毛穴の開きが改善した患者さんが続出しました。

ニキビはアクネ菌などの細菌が原因とされてきました。でも大部分の、ニキビの患者さんの皮膚の表面や皮脂からは細菌は検出されませんでした。そこで皮膚を取って皮膚の内部で何が起こっているかを検討しました。その結果真皮の皮脂腺を中心にたくさんの好中球という細胞が、活性化されてたくさん集まっているのがわかりました(図1)

この細胞は本来皮膚の中に進入してきた悪い細菌をやっつけるために存在します。そして細菌をやっつけるために、活性酸素やフリーラジカルという物質を放出します。これらの物質は酸化作用で細菌を殺します。酸化作用とはいろいろな物質から電子を奪い取って錆び付かせてしまうことをいいます。我々にとってビタミンCはなくてはならないものです。エネルギーの元になる、ブドウ糖やアミノ酸を細胞に取りこむ際には不可欠です。ビタミンCは体のなかで、いろいろな物質に電子を与える還元作用を持っています。すなわち還元作用とは酸化作用の反対の反応なのです。多すぎると我々の体を傷つけてしまう活性酸素やフリーラジカルという物質を無毒化するという、とても大切な作用もビタミンCは持っています。すなわちビタミンCの還元作用というものは、好中球の持つ酸化作用と全く反対のもので、酸化反応を打ち消すためには還元作用が必要なのです。我々の体の中、たとえば100mlの血液中には平均約1.2mgのビタミンCが存在するとされています。そして好中球は平常状態でも周りの、約10倍の濃度のビタミンCを細胞内に持っているといわれています。そして細菌をやっつけるために活性化されると、周囲からどんどんビタミンCを取りこんで、細胞内のビタミンCの濃度は、周囲の濃度の80倍まで上昇することが報告されています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?自分が放出する活性酸素やフリーラジカルより、自分を守るためには、還元作用を持つビタミンCが大量に必要なのです。このことは、活性化された好中球がたくさん存在する皮膚では慢性的に極度のビタミンC不足が起こっている可能性を強く示唆します。ですからビタミンCがほんの少し皮膚に入っていっても、そのビタミンCは砂漠に水が吸いこまれるように、あっという間に好中球に吸収されてしまいます。3%のビタミンCクリームではニキビの前には足りなかったのでしょう。では高濃度のビタミンCやローションを皮膚にたっぷり塗ってあげましょう。ビタミンCの一部は好中球に吸収されてしまいますが、余ったビタミンCは好中球より放出された活性酸素やフリーラジカルを還元作用により無毒化します。炎症を起こす活性酸素がなくなれば、当然皮膚の炎症も収まります。その結果皮膚の赤みやニキビが治ってしまうのでしょう。それでも直らない方には電気の力でイオン化したビタミンCを、皮膚の中にどんどん入れるイオン導入を行いました。このような治療をすることにより、ほとんどのニキビは消えますが、どうしてもニキビが消えない方もいます。ビタミンCを効率よく皮膚にいれるには塗るのが一番です。

ビタミンCを大量に経口摂取しても、血液中に十分のビタミンCがあると皮膚には行かずに、尿として排泄されてしまうとされています。最近、仕事が忙しい、帰宅時間が遅いなどというストレスが多い方では血液中のビタミンCの濃度が低下していると言う報告がありました。ストレスがかかると、我々はこれに対応するために、アドレナリンや副腎皮質ホルモンというホルモンの分泌が盛んになります。これらホルモンの合成のためにはビタミンCがなくてはならないのです。またアドレナリンの分泌が増加することにより、我々の体の代謝が増加します。その結果、活性酸素が体内でどんどん生じます。活性酸素を消去するためにもビタミンCが必用です。

ビタミンCはニキビを治す以外に、コラーゲンの合成を盛んにするという美容上大変重要な働きを皮膚でします。しかしながら、我々が生き抜いてゆくために、ビタミンCは他の臓器に分配されてしまうものです。皮膚はビタミンCが分配される最後の臓器なのでしょう。これらの事実は、忙しい現代女性では血液中のビタミンCの濃度が低下している可能性を示唆します。

厚生省は1日最低100mgのビタミンCを食事でとることを勧めています。

この場合血液中のビタミンCの量は100mlあたり約1mgになります。私はニキビで来院した25名の、20代の女性の血液中のビタミンCの濃度を測定してみました(図2)

その結果、平均値は0.94mgでした。しかしながらその平均値が比較的高い理由のひとつとして、野菜中心の食事を心がけたり、サプリメントでビタミンCを摂取している方が7名いて、その方の平均値が約1.8mgあったためでした。ビタミンCの量が0.8mg以下の方は17名もいました。一番低い方はなんと0.3mgでした。私はビタミンCを塗ってもなかなかニキビが直らない患者さんに、アセロラという果実より抽出した天然型のビタミンCを200mg含む健康飲料を1日5本飲んでもらいました。アセロラは単位重量あたりレモンの約40倍のビタミンCを含んでいるだけでなく、抵抗酸化作用を持つビタミンEも豊富に含んでいます。その結果驚くべき事が起こりました。大部分の患者さんで、その結果驚くべき事が起こりました。大部分の患者さんで、ニキビの赤みや盛り上りが低下しました。ビタミンCのクリームやローションを使用していても頑固なニキビが残っていた患者さんがいました。この患者さんのニキビは4週間後にはほとんど消失してしまい、顔の赤みも低下しました(図3,4)

これらの結果は私の期待以上のものでした。

ビタミンCの量が5.4mgから12.7mgまで増加した方もいました。皮膚だけでなく体の中でもどんどん消費されてしまうビタミンC。1日1グラムまでは取った量に比例して血液中の濃度が増加することがわかっています。かんきつ類やサプリメントを上手に利用して、最低1日1gはビタミンCを摂取するようにしましょう。ビタミンCはコラーゲンの合成にも必要です。ビタミンCをたっぷりとることで、ニキビだけでなく肌のキメが改善した患者さんも続出しました。また多くの患者さんが、イライラや疲労感が低下したと言っています。皮膚に持続活性型のビタミンCを塗るだけでなく、血液中にもナチュラルなビタミンCを十分補給すること。それがニキビ治療のポイントです。

私も積極的にビタミンCの摂取を心がけています。ちなみに私のビタミンCの量はすべての患者さんを上回る2.8mgでした。私は朝と晩に1グラムのビタミンCをサプリメントで取ります。忙しい外来診療をずっとしていると、頭に血がのぼり、ボーとしてきます。また肩もこってきます。そんな時私はレモンを二個丸かじりします。大きなレモンは1個当たり100mgのビタミンCを含んでいます。すると手足がポカポカしてきて、肩こりもすっと引いていくのがわかります。ビタミンCが体の細胞や筋肉を活性化して、交感神経の緊張も和らげるのでしょう。ビタミンCは血圧やコレステロールを下げる作用もあります。私は毎晩1グラムのビタミンCを取ってから寝るようにしたら、朝の血圧が約20mmHg下がりました。ビタミンCは美白作用、コラーゲンの合成を盛んにしてシワ、タルミを改善する作用、活性酸素を消去して赤ら顔、ニキビを治すだけでなく、老化防止作用を持つ、美容の切り札です。ビタミンCは1度に大量に取ると尿として排泄されてしまいます。1日の必要量を一気に取るのではなく、1日3回くらいにわけて少しずつ取るようにしましょう。それがビタミンCを効率よく血液中に維持するポイントです。

アメリカの厚生省に当たるFDAは1日2グラムまではビタミンCを取っても全く安全としています。自分でイライラやストレスを感じる方、頑固なニキビで悩んでいる方、運動をする方などはぜひ1日2グラムのビタミンCを取るようにしてください。きっと毎日が快適に過ごせるようになるはずです。