ビューティ・コラムcolumn

第20回 老化撲滅大作戦<その1> 適度な運動、好きな音楽、そして抗酸化剤が老化を防止!!

最近肌のハリがなくなってきた、目尻の小じわが気になる、何だか顔全体が垂れてきたような気がする、これは誰でも一度は経験します。このような現象はなぜ起こるのでしょうか?

そう皆さん気がついていますね、でもそれを認めたくない、あえて認めずに最近疲れているから睡眠不足だからと言い訳しています。でもそれは誰もが認めたくない事実、老化現象によるものなのです。この老化現象はなぜ起こるのでしょうか?現在、生物の老化を説明する学説として2つの説があります。ひとつはプログラム説といわれるものです。

すなわちヒトの寿命に限りがあるのは細胞の分裂回数があらかじめ決められているという説です。コラーゲンやエラスチンという皮膚の大事な繊維、これらの繊維が衰えるとシワ、タルミが出現します。これらの繊維を作る細胞は繊維芽細胞です。図1にせっせとコラーゲン細胞を作っている繊維芽細胞を示します。赤ちゃんの皮膚から採取した繊維芽細胞を生体の外で培養します。すると繊維芽細胞はどんどん分裂しますが約50回分裂するとやがて分裂は停止し、やがてすべての細胞は死に絶えてしまいます。一方80歳の方から採取した繊維芽細胞を培養すると20回から30回ほど分裂したら、細胞は分裂を停止します(図2)

この事実は逆に考えると、我々は皮膚の繊維芽細胞の分裂能力の半分を使いきったところで心臓や脳などの別の臓器がガンや脳出血などで致命的なダメージを受けて死んでしまうということになります。すなわち肌の細胞にはまだまだ余力があるということになります。実にもったいない話です。

そしてこの繊維芽細胞の培養による分裂回数は寿命の長い生物では多く、寿命の短い生物では少ないことが判明しています。これがプログラム説の根拠です。

もうひとつの老化の学説として活性酸素によるダメージの蓄積説があります。すなわち細胞内における代謝がとても活発で盛んに活性酸素を生じ、それをうまく消去できない生物ほど寿命が短く、うまく活性酸素を消去できる生物ほど代謝が盛んだとする説です。活性酸素をうまく消去できる能力を縦軸に、そして寿命を横軸にプロットして表を作製すると、見事な直線のグラフが出来上がります。すなわち代謝が盛んで活性酸素を消去できない寿命の短い生物としてネズミやウサギがいて、活性酸素の消去が上手な寿命の長い生物としてヒトがいるわけです(図3)

私はこの二つの説のどちらも正しいと思います。すなわちヒトはあらかじめ定められた寿命のなかで生活していくわけです。そして活性酸素を生じるような強いストレスが常にあると寿命が短くなります。私は皮膚科ですが、以前当直のアルバイトをしていました。夜寝ているときに起こされて、患者さんの治療にあたるというのは非常に強いストレスになります。以前各科のドクターの平均寿命を調べたら、夜起こされることの多い外科医の平均寿命は他の科のドクターに比べて約2年短いというショッキングな報告があります。

すなわちある一定の寿命をもった細胞に、活性酸素などのダメージが蓄積していくことで、私たちは老化という長い人生の坂道を歩んでいくのでしょう。そして我々の細胞の代謝速度は年齢を重ねるごとにだんだん低下してゆきます。残念ながらプログラム説が唱えるように、細胞レベルでの寿命は限れてます。しかしながら活性酸素などによるダメージは私たちの工夫や生活態度、食習慣などで、極力少なくすることが可能なのです。私たちの体内に活性酸素を発生させる大きな要因としてストレスがあります。ストレスとはいらいらさせるものの総称です。先ほどお話した、外科医の生活はその代表的なものです。ストレスによる皮膚症状として、赤ら顔、毛穴の開き、ニキビ、アトピー性皮膚炎、しわ、くまなどがあります。全身症状としては便秘、不眠、肩こり、生理不順やイライラ、疲労感などがあります。私ごとで大変恐縮ですが、私自身青山ヒフ科クリニックを設立した直後から不眠、肩こり、便秘に悩まされました。血圧もどんどん上がってしまいました。青山ヒフ科クリニックには全国からたくさんの患者さんが来院されます。私は患者さんの肌の悩みを解決するために、ない頭を一生懸命振り絞ります。そのためには頭にたくさん血液を送る必要があります。あまり働く必要のない筋肉や消化器には血液が行かなくなります。その結果が肩こりや頭痛、便秘といった体の不調だったのです。特に女性の場合は筋力が弱く、肩こりが出現しやすいという特徴があります。忙しい毎日を送る大勢の方が私と同じ症状をお持ちのことと思います。青山ヒフ科クリニック設立当時の私は、毎日それこそ命を削って仕事をしている、このままではいつか倒れてしまうと常に思っていました。その当時の写真が1999年10月ものです(図4)ビタミンCやAを外用していましたが、なんとなく肌に締まりがない状態です。その年の冬休みに南の島でのんびりと過ごしました。食べては、昼寝をし、そして泳ぐというまるでカバのような生活です。その結果血圧は正常に戻ったのですが、なんと1週間で5キロ以上も太ってしまいました。肥満は成人病そして老化を加速します。冬休み直後2000年1月の写真が図5です。

私は日常生活でストレスを減らすコツを真剣に探しました。その結果大きな答えが2つありました。ひとつは適度な運動をすることです。そしてもうひとつは自分の好きな音楽を聴くことです。私は毎日音楽を聴きながら1時間運動をするようにしました。その結果不眠、肩こり、イライラなどの症状はほとんどなくなってしまいました。また患者さんや職員にも急に肌のつやがよくなったといわれるようになりました。

私は運動をしたあとに皮膚の代謝を促進するマグネシウムの入浴剤をいれた、ぬるめのお風呂に20分から30分はいります。そのときは何もせず、なにも考えず、ただボーっとしてすごします。快適な運動、好きな音楽だけでなく、Doingnothing,thinkingnothingの時間を持つこと、これがストレスをなくす最大のポイントと私は自分の経験から学びました。運動が苦手な人でも好きな音楽を聴くこと、そしてゆっくりと入浴することは比較的簡単にできるはずです。食事も腹八分としました。私は2ヶ月で10キロ体重を落としました。2000年4月の写真を図6に示します。

確かに体重は減り軽快に動き回ることができるようになりました。しかしながら夜、診察が終わるころになるとクタクタに疲れてしまいました。図6の写真では確かに肌がしまっていますが、目元のシワが増加しています。私は過激な運動により栄養不足になっている可能性を考え、1日1時間の運動を30分に控え、木曜日、日曜日の仕事が休みの日は運動をせず筋肉を休ませることにしました。そして食事やストレスで不足しがちな、ビタミンCをはじめとする各種ビタミン、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル、そして抗酸化作用のある緑茶などを含んだ健康食品をとるようにしました。その結果体重は5キロ増加しましたが、そのほとんどが筋肉によるものでした。肩幅などが広がっていくのが自覚できました。外来終了後の疲労感も大幅に低下しました。2000年7月の写真では肌のツヤや締まりが増し、目元のシワも大幅に低下しています。そして現在この原稿を書いている2002年1月の写真を図8に示します。

目元のシワや目の下のタルミなどは以前より低下しているとおもいます。大勢の患者さんに前よりも若返ったといわれるようになりました。青山ヒフ科クリニックの診察室ではいつも自分の好きな音楽を流し、リラックスしながら、仕事をするように心がけています。

ここまで私の話を読んできて、はてな?と思った方がいると思います。そうです、運動をするということは、代謝があがり老化の原因である活性酸素が体内でどんどん生じることにつながることになります。いくら活性酸素の消去作用がうまくいっても100%それを消すことは不可能です。ここで非常に興味深い報告があります。ネズミを運動させないで飼育した場合と、運動させながら飼育した場合、運動させたほうが長生きするという報告です。またヒトでもまったく運動をしないヒトより適度な運動をしたヒトのほうが長生きするというデータがあります。これが大いなる老化理論のパラドックス(矛盾)です。

ここに私なりに検討を加えてみました。ヒトの細胞を培養する際に、培養液に何も加えないで培養するよりも、L-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシム塩(VC-PMG)というエステル型のビタミンCを加えて培養したほうが細胞の分裂が活発となり、なおかつ分裂する期間も長くなる。すなわち、細胞が活発に長く分裂するという報告があります。このことは我々がより豊かな老後を生きていくための示唆に大変富んでいると思います。ビタミンCの作用は美白作用やコラーゲンの合成を盛んにする作用以外に、活性酸素を消去してニキビや老化を防止します。もうひとつビタミンCの大切な作用はアミノ酸、グルコース、脂肪酸などの我々が摂取した栄養物を細胞の中にすみやかに取り込んで、代謝を盛んにするという作用があります。

そうです、ビタミンCは代謝を上げて、なおかつ活性酸素を消去するという老化防止のための2つの大事な作用を併せ持っているのです。VC-PMGは細胞膜レベルで天然のビタミンCにくらべて約8倍通過しやすいという特徴を持っています。我々ヒトは環境に適応するという特徴を持っています。我々の祖先も苛酷な環境に適応しながら、活性酸素をうまく処理して進化してきたのでしょう。我々は年をとるに従い、代謝が低下し活性酸素によるダメージが蓄積します。しかしながら代謝を上げて活性酸素を消去するビタミンCを培養液に加えることで、太く長く生きられることがすでに培養細胞レベルで証明されています。これを生活に実際に活かしましょう。すなわち運動の前後にビタミンCやE、大豆、緑茶などの活性酸素を消去する抵抗酸化剤や食品をとるようにするのです。このような生活をすることで、体内の細胞の中に生じる活性酸素を、よりうまく消去できるようになるのでしょう。

私はサプリメントでビタミンCを2グラムとる以外にアセロラ由来のビタミンCを1グラム、豆乳を500ml、そしてレモンを2個かじっています。朝の運動前にサプリメントで1グラムのビタミンCをとり、運動後に野菜ジュース200ml、レモン2個、そしてアセロラジュースを取ります。そのときのアセロラやレモンのおいしさは比べようがありません。まさに細胞にエネルギーが供給させる感じがみなぎってきます。そして運動後は何時間も抹消の血流がよくなり、代謝が亢進します。ですから診療で頭を使っても、あまり肩もこらなくなるようになるのです。ビタミンCは摂取後7時間で血液中のレベルは半減します。ちなみに私の場合、朝は約2mg/dlのビタミンCが夕方には1mg/dlに低下していました。ですから私は午後の診療中にはアセロラジュースをこまめにとるようにして、血液中のビタミンCのレベルを維持するようにしています。そうすることで血液中のエネルギーが速やかに細胞内にされ、なおかつ活性酸素もどんどん消去されるのです。イライラする、頭がボーっとするという方はぜひ1日最低2グラムのビタミンCをこまめにとるようにしてください。そして代謝を上げながら、活性酸素をどんどん発生させこと、たとえばイライラしながら食事したり、運動後の喫煙は老化を促進します。若い時から、肌にエステル型のビタミンCやA(レチノール)を塗るのはよくないと言う意見もありました。しかしながら私はそうは思いません。肌にこれらの物質を塗ることが、代謝を上げて、活性酸素を消去すること、すなわち肌に運動をさせるということなのです。そして最近、表皮角化細胞や毛を作る毛疱の細胞の一部は無限の増殖能を持つ幹細胞(ステムセル)という特殊な細胞であることが明らかになりました。これらの所見はおそらくほかの細胞にもあてはまることでしょう。すなわち運動をして抗酸化食品をとることが、全身の老化防止につながり、ビタミンCやAをヒフに塗ることが、肌の若さを保つために大切なのです。もちろん活性酸素を生じる紫外線をさけるUVケアも忘れないようにしましょう。先日大学の同窓会がありました。ツヤのある肌をもち、メリハリのあるボディラインを維持している同級生は、やはり運動をして、スキンケアをしていました。そして何よりも大切なことは常に自分自身を美しく保ちたいという意識をいつまでも持ち続けることだと思います。