ビューティ・コラムcolumn

第34回 最先端のニューロサイエンスがあなたの肌を変えます:肌は心の鏡です(1/14)

月日の経つのは早いもので、大学を卒業して皮膚科医になって20数年が経ってしまいました。

大学を卒業したての頃は、診断名や治療法を覚えるので、精一杯の日々でした。また卒業して5?6年経ってからは、シミやニキビがなぜできるかを解明するために朝から晩まで、診療の合間を見ては研究室にこもっていました。病的皮膚を正常にするだけでなく、さらに美しい肌を実現するために1999年に青山ヒフ科クリニックを開設しました。最近、強く感じることがあります。それは皮膚科医は、皮膚だけを診るだけでなく、肌の奥にある心の状態も診る必要があるということです。すなわち、“肌は心の陰影を投影する鏡である"ということです。心が喜びにあふれ活き活きとした心の方はちょっとした肌のトラブルがあってもすぐ治ります。しかしながら心にトラブルやストレスがある方は、なかなか皮膚のトラブルも解決しません。

青山ヒフ科クリニックを来院する方のトラブルとしては、

1)シミ、くすみ2)シワ、たるみ3)ニキビ、毛穴の開き4)敏感肌、乾燥肌やアトピー性皮膚炎5)細菌感染症やウィルス感染症です(図1)

これらの疾患のすべてに有効なのが、高濃度ビタミンC誘導体の外用や天然型ビタミンCの内服です。そのメカニズムについては、図1に示します。そして最近思うことは、これらのトラブルを解決するために、一番必要なことはストレスに負けない心と肌を作ること、そしてビタミンCはストレスに負けない心と肌を作るためのお手伝いをしているのではないのかということです。学生時代はなんともなかったのに、就職したらニキビやアトピーが悪化したというお話は、良くあることですが、これらの例は心のストレスがそのまま、肌に投影された現象と言えるでしょう。そこで私は肌と心(脳)がどのようにコネクションされているかを調べてみました。

その結果、肌と心は神経で密接に連結していることが判明しました(図2)

脳から肌に向かっている神経は自律神経といって、交感神経と副交感神経からなっています。肌の状態は交感神経と副交感神経の緊張状態の微妙なバランスのうえに成り立っているのです。これら中心から末梢に向かう神経を遠心性神経ともいいます。交感神経は我々が緊張状態(バトルモード)にあるときに優位になる神経です。副交換神経はゆったりとくつろいでいる状態(リラックスモード)に優位になる神経です。また肌の状態、かゆみ、温度、痛み、などを伝える知覚神経が肌から脳に向かっています。肌の状態を脳に伝える系としては、眼などの感覚器官を経て脳に伝わる系もあります。そして興味深いことには眼などの感覚器官自体も自律神経の支配を受けているのです。神経の末端からは神経伝達物質が分泌され、隣接する中枢神経、肌の細胞、筋肉、血管などに情報を伝え、作用を発揮します。すばやく作用するものとして、副交感神経の末端から分泌される、アセチルコリン、交感神経の末端から分泌されるアドレナリン、副腎から分泌されるノルアドレナリンなどがあります。またゆっくり作用するものとしては、脳内麻薬であるエンドルフィンや、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)やサブスタンスPという神経ペプチドなどがあります。ペプチドとはアミノ酸が10数個結合したものをさします。

ここで皆さん、これらの物質の一部は確かホルモンのはずではと思ったことでしょう。教科書的にはホルモンとは、主として脳や副腎で分泌され、血流によって遠方に運ばれ、作用を発揮するものと定義されています。その一部として、成長ホルモンやACTHやMSHがあります。実は以前ホルモンとして定義されたものの多くは神経の末端から分泌される神経伝達物質なのです。そしてこれらの神経伝達物質が神経からだけでなく、表皮角化細胞やメラノサイトなどの細胞でも分泌され、肌のコンディションの維持に重要な働きをなしている事が明らかになってきました。たとえば紫外線にあたると皮膚には炎症を生じます。このときに表皮角化細胞からMSH、ACTHが、メラノサイトからもMSHが分泌されます。これらの神経伝達物質はメラニン産生MSHが分泌されます。これらの神経伝達物質はメラニン産生を生じてサンスクリーン作用を肌に生じるようにしますが、MSHにはメラニンを作るという作用以外に炎症を抑えるという作用もあるのです。またメラニンも、肌の炎症により生じた活性酸素を取り込んで無毒化するという非常に大切な作用を持っているのです。また肥満からもヒスタミンなどの神経伝達物質が放出されます(図3)

またケガをして表皮の一部が欠損すると、表皮角化細胞は神経成長因子(NGF)という神経伝達物質を真皮に分泌します。この(4/14)長因子(NGF)という神経伝達物質を真皮に分泌します。このホルモンは神経を成長させて呼び寄せる作用があります。その結果真皮に存在する神経が増加します。神経の一部は表皮内まで進入してきます。そして神経の末端からサブスタンスPという神経伝達物質が放出されます。サブスランスPは表皮角化細胞の増殖を促進するという報告があります。その結果ケガの治りが早くなるのです(図4)。

またサブスタンスPはアトピー性皮膚炎の際にも増加することが報告されています。これも炎症により傷ついた表皮角化細胞の修復を促進するためであろうと私は推測しています。さて肌には無数の神経が入り込んでいることが最近明らかになりました。肌の血管、皮脂腺、汗腺、メラノサイト、表皮角化細胞、繊維芽細胞や免疫担当細胞であるランゲルハンス細胞などに接触している神経もあります。毛を逆立てる立毛筋にも神経がきています。また肌の知覚を感知するためにマイスネル小体などの感覚器官も表皮直下に存在します。感覚器官は接触などによりその先端の構造が変化してゆがむことで、触られているという事実を脳に伝えます。副交感神経が優位な、リラックスモードでは肌への血流は豊富です。その結果肌の代謝が増加し、角層、表皮、真皮はふっくらとしてきます。また皮脂や汗の分泌も適度となっています。その結果、毛穴の開きも目立ちません(図5)

ところが交感神経が優位となるバトルモ-ドでは、肌の血管は収縮してしまいます。この状態が長く継続すると、肌の代謝は低下してしまいます。その結果角層、表皮、真皮は萎縮して薄くなります。一方メラニン産生は増加し、皮膚は全体にくすんできます。また相手に殴られても肌のダメージを少なくするために皮脂の分泌が上がります。さらに棍棒を持って相手を殴るときに手がすべらないように、あるいは相手に負けて四つんばいになって逃げるときに、手足がスリップしないように皮膚の汗の分泌は増加します。ところが、皮膚のバリア機能を司る、角層が萎縮しているために、肌の乾燥傾向は増加します。表皮の細胞の増殖も低下、コラーゲンやヒアルロン酸を作る繊維芽細胞の活性も低下してしまいます。その結果、毛穴が開いているけれども、乾燥肌でくすんでキメやツヤのない肌が出来上がるわけです(図6)

これを今までは混合肌といっていました。私はこの状態を活性が落ちた肌、すなわちInactiveskinと呼びたいと思います。そしてストレスに負けないいきいきとして喜びにあふれた心の状態は、交感神経の緊張を無くし、副交感神経が優位となります。皮脂は汗の分泌は正常となり、皮膚への血流は増加します。その結果肌の代謝が増加して、透明感のあるプリプリの肌が実現します。そして一番大切なことは“仕事とは軽度のバトルモードが長期間継続すること"なのです。多くの方が仕事のストレスに負けて青山ヒフ科クリニックを受診されています。これらの事実と対策をまとめます。

さて以前私は以前のコラムでストレス撲滅のポイントは運動と音楽であること、このときに脳内麻薬であるエンドルフィンが血液レベルで増加していることを述べました。そしてビタミンCを内服すると血液中のエンドルフィンのレベルが増加することを発表しました。私はストレスに負けた皮膚を活性化するためには、肌と心をコネクションする神経細胞を活性化してやればいいのではと思いました。心(脳)がリラックスした状態を速やかに肌に伝えるためには、神経活動が円滑に行われる必要があります。その鍵が、実は細胞の発電機であるミトコンドリアなのです。神経細胞は神経伝達物質を放出する作用を発揮するという重要な役割を持っています。この作用は大きなエネルギーを必要とします。ですから神経細胞にはたくさんのミトコンドリアが存在しています、いわば神経細胞はミトコンドリアのカタマリなのです。ミトコンドリアは細胞の細胞質に存在しています。私たちは食物として摂取した蛋白質、脂質、炭水化物をエネルギー源として使用します。これらの3大栄養素はアミノ酸、脂肪酸、ピルビン酸まで消化、吸収、分解されて体中のミトコンドリアに運ばれ、ミトコンドリアのなかのクエン酸回路によって酸化されます。このとき生じた電子は電子伝達系というポンプの中を移動します。ミトコンドリアは二重の膜になっています。

電子伝達系は別名プロトンポンプといいますが、膜の内側から外側に水素イオンをくみ出します。膜の外側に大量に生じた水素イオンが、今度は濃度勾配によって、ATP合成酵素の中を一気に膜の内側に走ります。このときにミトコンドリアは大量のアデノシン3リン酸(ATP)を生じます(図9)

3大栄養素のなかで一番エネルギー源として利用しやすいものは炭水化物が分解して生じた糖です。糖はピルビン酸まで分解されてからミトコンドリアに入りますが、入るまえにピルビン酸に分解されるのになくてはならないものが、実はビタミンB1なのです。またミトコンドリアに入ったピルビン酸がクエン酸回路に入る際にもビタミンB1が必要です。脂肪酸がミトコンドリアに入るには、カルニチンという物質が必要です。この合成に必要なのが、ビタミンCですが、ミトコンドリアに入った脂肪酸がクエン酸回路に円滑に入るにはビタミンB2がなくてはならないのです。そしてビタミンB1、B2、B6、B12が協調してクエン酸回路を円滑に回転させます。ビタミンCは美容の切り札としていろいろな美肌作用を持っていることは、皆さんすでにご存知だと思います。

それではビタミンBはどのような作用を持っているのでしょうか?

ビタミンB1:糖を分解する際にミトコンドリアの外側だけでなく、ミトコンドリア内で必要とされる。末梢や中枢の神経の活動電位(神経インパルス)の発現に必要。不足すると知覚障害やむくみ、倦怠感、いわゆる脚気が出現する。ビタミンB2:多くの酸化還元反応や糖や脂肪酸の代謝に関与して過酸化脂質を消去する。特にミトコンドリア内の電子伝達系を活性化する。また酸化したビタミンCを還元する。不足すると知覚障害や口唇炎や肌荒れ、ニキビが出現する。ビタミンB6:アドレナリンやノルアドレナリンなどの各種神経伝達物質の合成に必要。神経活動を介してホルモンや免疫のバランスを調整する。不足すると、肌荒れ、ニキビ、免疫力が低下する。ビタミンB12:ミトコンドリア内のクエン酸回路の活性化、維持に関与。末梢神経の活性化や造血反応に必要。不足すると貧血、倦怠感、知覚障害やうつ病が出現する。

どうですか、ビタミンBは以上述べたようにさまざまな作用を持っています。上に示したようにビタミンB群が神経活動やミトコンドリアの活動に大切な役割を果たしていることが良くわかります。またビタミンCは我々の体のいろいろな物質を還元するという非常に大切な役割を持っています。ところがほかの物質を還元した結果、自らは酸化してしまうのです。この酸化したビタミンCを還元して、還元型のビタミンCに戻すという非常に大切な役割を持っているのがビタミンB2なのです。すなわちビタミンB群の役割を集約すると、ミトコンドリアの活性化、神経の活性化、ビタミンCの還元、そして肌の活性化といえるでしょう。ビタミンB群が欠乏すると生じる口唇炎を生じます(図10)

この方の場合、注意深く肌を見ると、肌は乾燥しているのに毛穴が開いている、いわゆるInactiveSkinであることがわかります。

神経の作用はいろいろな情報を隣接する細胞や神経に伝達することにあります。この神経の情報の伝達は神経活動電位の発生で開始されます。細胞の外側にあるナトリウムイオンが細胞の中に入り込むことにより、細胞膜の電位が変化します。この電位の変化は次々と隣接する膜に移行します。神経活動電位のことを神経インパルスともいいます。一番速い神経では神経インパルスは秒速20メートルに達するといわれています。この神経インパルスが発生するためにビタミンB1が必要とされています。神経インパルスが神経細胞の末端に到達するとそこで神経伝達物質の放出が起こります。この神経伝達物質はミトコンドリアで生じたATPを利用して合成されます。そして放出する際にもエネルギーが必要です。ここでもATPが利用されます。前述したようにATPを合成するにはビタミンB群とビタミンCがミトコンドリアで必要とされます。またアドレナリンなど一部の神経伝達物質の合成にはビタミンCとビタミンB6が必要とされています(図11)

さて神経を活性化するのにビタミンCやB群が大切であるということがわかりました。その他に肌にいいものとして、ビタミンPがあります。このビタミンはビタミンCの効果を高めるとしてレモンから見つかったものです。またビタミンA(レチノール)や油分が多いところで活性酸素を消去するビタミンEがあります。またイソフラボンはエストロゲン作用を発揮して、肌にキメとハリをもたらす事は良く知られています。また最近肌を保護して活性化する成分として、天然酵母エキスが注目されています。この成分は角層を構成するアミノ酸(天然保湿因子)と構造が非常によく似ています。肌に潤いを与え、代謝を促進することが判明しました。また私のクリニックで乾燥肌に対しての効果をチェックしたところ、刺激が極めて緩和であり、乾燥肌を明らかに改善することを確認しました。酵母エキスには皮膚を保護する作用を持つ、ビタミンHや造血作用をもつビタミンMも含まれています。また肌の代謝を促進するには血行促進作用を持つ植物エキスが有効です、紅藻(ダルス)エキスやイチョウエキスがそれにあたります。さらにカルニチンやシステインを含み、脂肪燃焼を促進して神経細胞や肌の細胞を活性化するものとしてガラナエキスがあります。これらの成分すべてを肌に塗るとどのような事が起こるのでしょうか?神経の活性化により、肌の代謝が促進します。活性化した皮膚もミトコンドリアが多数存在します。すなわち神経を通じて活性化が増加した肌に今度はダイレクトに有効成分が働きかけます。それを眼で見て、なんてきれいな肌だろう、触れてみてなんてスベスベなのだろうと、自分の肌に感動して脳内麻薬であるエンドルフィンの分泌が増加します。

最近、エンドルフィンが皮膚のバリア機能をアップさせるという報告もありました。エンドルフィンはストレスの指標であるステロイドホルモンのレベルを低下させる作用もあり、シワをなくし、キメを改善させます。各種ビタミン類や酵母エキス、植物エキスなどこれらすべての成分を含んだエッセンスを、乾燥肌で毛穴が開いている方に2週間外用したところ、全体に色が白くなり、キメが改善しました(図12-13)

また軽いアトピー性皮膚炎の方の肘に外用したところ、2週間で肘の色素沈着やキメが改善しました(図14-15)

<※ケイアクティブエッセンスは2016年時点で終売商品です>

以上を述べてきたような、ニューロサイエンスと私の臨床体験をベースにして設計した外用剤、それがドクターケイのスキンケアの基礎となっています。サンプルをお試しになってみたい方はドクターケイにご連絡ください。

◇フリーダイヤル:0120-68-1217

http://www.doctork.jp

疲れた肌があっという間に改善することでしょう。青山ヒフ科クリニックのホームページの読者の皆さん、ストレスに負けないで、がんばりましょう!!