ビューティ・コラムcolumn

第114回 ビタミンABCでストレスに負けない心と体と肌を作りましょう

ビタミンABCでストレスに負けない美しい肌を実現しましょう

 

第1章 ヒトはストレスを排除すべき異物とみなして皮膚や全身に炎症を起こします

青山ヒフ科クリニックではニキビや毛穴の開いた方がたくさん来院されます。就職してからひどくなった、転職したら出てきたという方がたくさんいます。就職や転職で増加するのは精神的ストレスです。精神的ストレスや紫外線などのストレスがあるとニキビや毛穴の開きが起きます。ストレスに対する反応はなぜ起こるのだろう、ストレスに対する反応が起きなければヒトの心も体もそして皮膚も安泰になるのにと考えました。

僕がたどり着いた結論は、人はストレスを細菌やウィルス同様に、“排除すべき異物として認識して除去反応を起こすから” という結論に達しました。なぜ僕がそのような結論に至ったのか解説します。

 

朝早く起きて満員電車に乗って今日も仕事をしなくてはならない。

紫外線をたっぷりと浴びてしまった。

このようなストレスに対する内分泌的、神経的反応について説明します。

ストレスに対して視床下部(hypothalamic)-脳下垂体(pituitary)-副腎皮質(adorenal) が起こす一連の内分泌反応をHPA軸といいます。各臓器の頭文字をつなげてHPAになるからこの名前があります。HPA軸はちょっと違和感のある言葉ですが、HPA内分泌システムと考えてください。ストレスを感知した脳の視床下部からは副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone,CRH)というホルモンが分泌されます。CRHは脳の下垂体に作用して副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropin hormone, ACTH)というホルモンを産生させます。ACTHは副腎皮質に作用してコルチゾールという副腎皮質ホルモンを分泌させます。全身にCRHは炎症反応を起こします。CRHは血管内皮細胞に作用して内皮細胞同士の隙間を大きくします。血管内を流れる炎症性細胞は内皮細胞の隙間を通りぬけて皮膚に漏れ出します。その結果皮膚には肥満細胞をはじめとする炎症を起こす細胞がたくさん存在するようになります。炎症性細胞は活性酸素や炎症性サイトカインを放出します。これらの物質は皮脂分泌を促進します。内皮細胞同士の隙間が大きくなると血管内の赤血球が透けて見えるようになり、皮膚は赤くなります。この反応は皮膚に侵入した細菌やウィルスを除去するために血管から好中球や単球などの免疫細胞が飛び出しやすくするために起きます。皮脂分泌が増加するのは皮膚のバリア機能を増加させて、細菌などの皮膚への侵入を抑えるためでしょう。実は皮脂が増加しすぎると、アクネ菌や遊離脂肪酸が増加して、ニキビや脂漏性皮膚炎などの毛穴の開いた赤ら顔を生じてしまいます。

 

ストレスは交感神経、副交感神経からなる自律神経に作用して交感神経を活性化します。

交感神経からはノルアドレナリンが分泌され、心臓の拍動を促進すると共に皮膚や内臓の血管を収縮して、脳や骨格筋への血流を増加させます。運動会の徒競走の時のスタート前に心臓がどきどきしたことがあると思いますがそれと同じ状態になります。一方血管拡張作用のある副交感神経はストレスがあると休息状態になります。この結果皮膚に来る血流は低下します。これらの結果を下にまとめます。

上に示すようにストレスにより刺激された交感神経は副腎髄質に作用してノルアドレナリンだけでなくデヒドロアピアンドロステロン(DHEA)というホルモンの分泌を促進します。DHEAは男性ホルモンや女性ホルモンのもとになるホルモンです。DHEAとノルアドレナリンはやる気スイッチをオンにするホルモンです。素敵な人に会っているときに、胸が高まるのもこれらのホルモンのおかげです。なお同じくやる気スイッチをオンにしるドパミンはノルアドレナリンの前駆体です。このような反応をストレスは起こします。グルココルチコイドは血糖を増加させ血圧を増加させます。

なおグルココルチコイドは一般にはステロイドホルモンと呼ばれるホルモンで炎症を抑える作用を持つことが知られています。CRHにより全身に過剰な炎症反応が起こるのを抑えるために免疫抑制作用を持つグルココルチコイドが分泌されるでしょう。

上に示すようにストレスがあるといろいろなホルモンが増加します。疼痛除去作用のあるβエンドルフィンは皮脂分泌を抑えますが、それ以外のCRH、MSH、グルココルチコイド、などは皮脂分泌を増加させます。グルココルチコイドは血糖値を上げ、ノルアドレナリンは心臓をどきどきさせて拍出量を上げます。このような状態は非常にエネルギーを必要とします。短時間であれば問題は全くなく、むしろ心や体を活性化させます。適度なストレスは人生のスパイスと呼ばれる所以ですね。でも徒競走の前のヨーイ、と号令をかけられてスタートのピストルが鳴るまで1時間、半日、あるいは数日かかるとしたらとても腰を持ち上げて心臓をどきどきさせた状態は継続できません。心も体も疲れ果ててしまいます。これが短時間のストレスと異なり慢性ストレスが心を体にダメージを与える原因になります。

上の図にしますように、皮膚に来る血流が低下した結果角層は剥がれ落ちてしまい皮膚のバリア機能は低下します。

この状態を何とかしようとして皮脂分泌は亢進して厚い皮脂膜を作って皮膚のバリア機能を上げようとする反応が起こります。一見すると皮脂が多くバリア機能がしっかりした皮膚に見えますが、角層が薄くなり、その下のタイトジャンクションの保水機能も低下して、乾燥肌の状態になります。この状態をインナードライスキンと呼ぶこともあります。”オイリースキンで毛穴が開いているけれども潤いがない” ストレススキンが実現してしまうのです。

皮脂分泌が増加しますから毛穴は開きます。皮脂はオレイン酸などの遊離脂肪酸に分解されて皮膚に炎症を起こし皮膚は赤くなります。炎症によって表皮細胞は増殖傾向を示します。毛穴の出口が詰まるとニキビになります。

上の図に示すようにTゾーンが赤くなり毛穴に一致して小さな丘疹、ニキビが発生するいわゆる脂漏性皮膚炎の状態になります。脂漏性皮膚炎はニキビ同様に精神的ストレスで発症しやすい疾患です。

 

第2章 ストレスが増加するとアドレナリンとグルココルチコイド(ステロイド)が増加して代謝促進します

前回ストレスがかかると交感神経が活性化して副腎髄質からアドレナリンが増加してHPA軸の活性化により副腎皮質からグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンともいいます)が増加すると解説しました。これは生体に辛さを与える刺激ストレスから逃れるためのシステムが起動したためです。我々の祖先が餌を探しているときに、クマやライオンと出会ってしまいます。この時に、脳が逃走するか、闘争するかを判断します。また逃走や闘争には骨格筋が動くことが必要です。

 

ストレスに際しては交感神経でアドレナリンが増加、HPA軸でグルココルチコイド(ステロイド)が増加します。

上に示すようにアドレナリンはやる気スイッチオンにしてグルココルチコイドは血糖値を増加させるとしています。ここまではいろいろな教科書やネットに書いてありますが、これを深く読みこんでみました。

ストレスで増加したグルココルチコイドは血液中の糖、脂質、アミノ酸を増加して脳や骨格筋にこれらの成分を送り、脳や骨格筋の活動を上げようとします。アドレナリンは心臓の拍出量を上げて、末梢組織に血液をたくさん送ります。この時闘争や逃走に不必要な皮膚や内臓に血液がいかないようにこれらの組織に行く血管は収縮します。すなわち、糖や脂質などを大量に含んだ栄養たっぷりな血液を、どんどん脳や骨格筋に送りこむシステムが稼働するわけです。いわば高濃度のガソリンを、回転を上昇させた燃料ポンプでエンジンに送りこむということが体内でおこるわけです。その結果脳は適切な判断を下し、骨格筋もパワーアップして生き延びる可能性が増加することになります。この間皮膚や内臓の血流は低下します。子宮や卵巣の血流が不足すると生理不順、胃腸の血流が低下すると胃炎や便秘などがおこります。ストレスでニキビができて、生理不順や便秘になるのはこのためです。

この状態は体内のグリコーゲンが分解して糖になったり、トリグリセリドという脂質が分解されて遊離脂肪酸になることで維持されます。蛋白の合成はストップして分解が起こります。ですからストレスが長く継続すると、皮膚のコラーゲンが分解される、表皮細胞の増殖も最低限になります。骨格筋も分解されて委縮します。ステロイドはグルココルチコイドですが、ステロイドを長く内服したり、皮膚に塗ると皮膚が委縮することはよく知られています。また心臓が長く拍出増加を継続すると高血圧になり、高血糖が長く継続すると糖尿病になってしまいます。ストレスは短時間であれば体にいい作用を示しますが、慢性ストレスは全身を疲弊させてしまいます。グルココルチコイドは抗炎症作用を持っていますが、皮膚に使用するとニキビや赤ら顔が悪化します。

 

第3章 なぜストレスホルモン、ステロイドを塗ったり飲んだりするとニキビ、赤ら顔が悪化するのでしょう

ステロイドホルモンは炎症を抑える作用があります。前回ストレスがあると交感神経の活性化により副腎髄質よりアドレナリンが分泌されHPA軸の活性化により副腎皮質よりグルココルチコイドが分泌され、やる気スイッチオンで心臓がドキドキしながら、血液中の糖や脂質が増加して脳や骨格筋などの末梢組織に栄養をたっぷり送り、闘争か逃走に対応するのです。

ストレスで分泌されるグルココルチコイドは免疫抑制作用を持っていることは周知の事実です。なぜグルココルチコイドが免疫抑制作用を発揮するのか推定してみました。アドレナリンは免疫抑制作用を発揮することが知られてきましたが、最近、マクロファージや好中球などの免疫担当細胞がアドレナリンの分泌源の一つであり炎症部位で放出されたアドレナリンが炎症を増強することが報告されました。過剰な炎症は組織にダメージを与えることが知られています。新型コロナウィルスに効果があると報告されたデキサメサゾンはグルココルチコイド作用を持つ有名な薬剤です。

ストレスでアドレナリンが分泌されて免疫反応が過剰になるのを防ぐために、グルココルチコイドが分泌され、過剰な炎症を防いているのでしょう。ストレスがあると視床下部より分泌されるCRHは強力な炎症を起こします。CRHによる炎症が過剰にならないためにも炎症を抑えるグルココルチコイドが分泌されるのでしょう。ストレスでニキビや脂漏性皮膚炎あるいは毛穴の開きが起こります。これらの疾患は炎症反応を伴います。ですからこれらの疾患にグルココルチコイドを投与すると、抗炎症作用が発揮され疾患が治癒することが期待されます。ですからこれらの疾患にグルココルチコイドは保険適応されており、投与されています。しかしながら一時的に炎症や赤みは低下しても治癒には至りません。

なぜでしょうか?炎症性細胞はTLR2というパターン認識受容体でアクネ菌を認識します。パターン認識受容体とは細菌やウィルスそのものの構造や産生物のセンサーです。TLR2がなければアクネ菌を認識する確率が低下して炎症反応は起きにくくなるのです。実際にはPAR2などのアクネ菌が産生した蛋白分解酵素を認識する受容体もあるのでアクネ菌を認識する程度はゼロにはなりませんが低下するのは間違いありません。グルココルチコイドは炎症を起こす細胞のサイトカインや活性酸素の産生は抑えて炎症を抑えます。しかしながら、TLR2というセンサーの発現は増強して、アクネ菌に対する免疫反応は増強するのです。

またグルココルチコイドは皮脂分泌を増強します。

その結果毛穴は開き、皮脂を餌とするアクネ菌も増殖します。アクネ菌の産生する毒素や遊離脂肪酸が増強して、ニキビの炎症はひどくなるのです。

グルココルチコイドはアクネ菌を検出するTLR2の発現を増強して、皮脂分泌を増加してニキビ、赤ら顔、毛穴の開きを悪化させます。さらにグルココルチコイドは顔に外用すると依存症を生じるという問題もあります。

上は赤ら顔でグルココルチコイドすなわちステロイドを何年間も外用していた方です。ステロイドを使用しないと顔がほてる、かゆくなって腫れてしまうと、外用を中止できなかったそうです。ビタミンABCの外用やイオン導入などで治療して、落ち着くまでに2年かかりました。左は治療前、右は治療後です。 赤ら顔やニキビにはステロイドではなくビタミンABC、グルタチオンなどによる治療をお勧めします。

上は脂漏性皮膚炎でステロイドを処方されて悪化した脂漏性皮膚炎の方です。外用した期間が2週間と短かったので、ビタミンCの外用と内服などで1か月後には右のように落ち着きました。ニキビ、赤ら顔、毛穴の開きの第一の原因はストレスなどによる皮脂の過剰分泌です。グルココルチコイドの欠点は皮脂分泌を増強してしまうことです。顔に外用した場合依存症を生じていまい、塗らないと顔が赤く、火照るようになります。

なぜグルココルチコイドが皮脂分泌を増加するか考えてみました。我々の祖先にとってストレスは、猛吹雪の中食料をさがさなくてはならないためでしょう。皮脂は皮脂膜を形成して皮膚のバリア機能を亢進します。炎天下で行動する際には、皮脂膜がある程度紫外線をブロックする、皮脂が皮膚の代わりに酸化して皮膚を酸化から守る作用を発揮していたのではと推定しています。そして皮脂膜は寒さの中で皮膚を乾燥から保護します。現代社会では、精神的ストレスが主になり、過剰な皮脂膜は無用になる場合が多いのです。皮脂分泌を抑えながらストレスに応じたスキンケアをすることが大切ですね。

第4章 適度なストレスは心と体を活性化する人生のスパイスです

ストレスが継続すると、ニキビ、赤ら顔、毛穴の開きやシミ、シワなどの皮膚の老化が起こるだけでなく高血圧、糖尿病、発癌なども惹起することを解説しました。これはストレスを細菌と同じような排除すべき異物をとして認識して、慢性炎症を起こすために起こります。継続するストレスは心と体や皮膚にダメージを与えます。ストレスは生体につらさを与えるものです。ではストレスは全くないほうがいいのでしょいうか?

実は適度なストレスは心と体を活性化する作用を持っているのです。ストレスは体内で活性酸素を産生して、酸化ストレスを生じます。酸化ストレスを除去するために、代謝の促進、すなわちミトコンドリアの活性化や炎症抑制反応が起こるのです。

ストレスが一時的なものであればアドレナリンやグルココルチコイドを分泌する副腎が疲弊することもありません。ストレスに対応するために、全身の細胞のミトコンドリアが増加してひとつひとつのミトコンドリアのATP産生能があがるだけでなく、ストレスにより生じる炎症を抑える能力も増加します。ストレスは脳への血流を増加して、脳細胞を活性化することも知られています。適度なストレスは、体内で適切な活性酸素を生じて、それを除去するためのシステムを活性化するのです。

僕は、診療後は週に3日ジムで運動をしています(時にはジムに行くのをさぼりたくなります)。ジムでトレーニングしている最中も、最後の有酸素運動イヤだなあと思います。でもすべてのトレーニングをすると、心も体もポカポカしてくるのです。運動すると脳を含む全身への血流が増加します。その後自宅での論文を読んだり書いたりする仕事もどんどんはかどるようになります。運動やデスクワークで生じた酸化グルタチオンやATPが分解してできたアデノシンが増加してベッドに入るとたちどころに眠れるようになります。継続的に運動をする人は肌に艶があり引き締まったボディをもち頭の回転もよくなり、筋力も増強する全身に強力なアンチエイジング作用を実現しています。継続的な運動は、運動するたびに体内に適量の活性酸素を生じており、その処理のための抗酸化能が増加するのです。コロナでジムが休みとなりしばらく運動はしていなかったのですが、ジムで運動してクリニックにいったら先生、顔がピカピカしているといわれました。適切な運動も、適度なストレスも、活性酸素を体内に生じる酸化ストレスを起こすことで活性酸素の消去システムを鍛えているのです。

適切な運動は、適度なストレスとなり体も心も活性化します。

会社で大きなプロジェクトが生じて、そのプランニングを任された、学校で試験がある、などは大きなストレスとなります。でもプランニングのプレゼンがうまくったとき、試験がうまくいったときの達成感は大きな喜びをもたらします。試験勉強の最中はグルココルチコイドやアドレナリンの分泌が増加します。精神的ストレスを感じているときと同じ反応が起こります。でも最後の達成感の際にエンドルフィンが大量にされ、心も体も喜びに満たされます。このようなある程度のつらさがあると、休日のありがたみが増加します。毎日ストレスが全くなく、機械的にだらだら仕事をしている状態と、ある程度のストレスを感じるがストレスに対処してそれを克服して達成感や仕事のやりがいを感じる日々どちらの生活をしたいとおもいますか?

朝から晩まで何もしないで南の島で過ごす、青い空、光る海、頬をなでる潮風、人生最高のひと時ですね。でもそれが永遠に続くとしたら、どうでしょうか?きっと退屈してしまうのではないでしょうか?僕の場合、そのような生活を1週間もして、鏡を見たら妙に間延びした顔がありました。頭も体も緩んでしまったのです。休暇の終わりの頃には、クリニックでの忙しい生活に戻りたい、そう思う自分がいました。

適度なストレスは心も体も成長させます。車のエンジンは時々高回転まで回さないと、アクセルを踏んでも反応しなくなるといいます。ストレスはエンジンのアクセルを踏んだ状態です。ときどきストレスというアクセルを踏んで、心と体に刺激を与えることもまた大切なのです。ストレスを減らす工夫として瞑想、リラックスなどがありますが、これはストレスでお休みしてしまう副交感神経を有意にする効果があります。運動は、酸化ストレスを減らすトレーニングをすることで、同じく酸化ストレスに耐える力を増大させます。リラックス、瞑想が受動型のストレス解消法としたら、運動は副交感神経だけでなく、交感神経も活性化して活性酸素を消去する 能動型のストレス解消法でしょう。

この二つをうまく組み合わせて、適度なストレスを乗り切ることが豊かな日々につながると思います。ビタミンABCやグルタチオンなどの抗酸化剤もストレス解消のパワーを増大させます。交感神経も、交感神経も、そして視床下部、脳下垂体、副腎、が健全にホルモン分泌をするにはビタミンABCやグルタチオンが十二分に必要なのです。

ビタミンABCやグルタチオンは皮膚のストレスを軽減して、透明感のある皮膚を実現します。

第5章 ストレスを圧倒するスキンケアと日常生活

毎日の生活でストレスを全く感じていないという方はほとんどいないと思います。ストレスにより、アドレナリンやグルココルチコイド(ステロイド)ホルモンの増加が起こり、代謝があがり大量のATPが産生されるようになります。大量のATPは脳や骨格筋で消費され、闘争か逃走に使用され、僕らが生き伸びる確率が増加します。大量のATPを産生するためにミトコンドリアでは活性酸素の産生が増加します。ミトコンドリアで使用される酸素の2から3%が活性酸素に変換するといわれています。ミトコンドリアで使用される酸素が増えれば、活性酸素の量も増加します。一方、人はストレスを排除すべき異物として認識して、細菌やウィルスに対するのと同じように炎症を起こします。その結果皮膚や全身に慢性炎症を起こします。皮膚では皮脂分泌の増加による毛穴のひらき、脂漏性皮膚炎などの赤ら顔やニキビを引き起こします。交感神経の緊張により、心臓の拍動は増加し脳や骨格筋への血流は増加します。闘争や逃走をうまくいかせるのに皮膚や内臓は関係ないので皮膚や内臓の血管は収縮します。

皮膚への血流低下により代謝が低下して、皮膚の菲薄化、バリア機能の低下、シワ、たるみが起こります。またメラニン産生を刺激するMSHというホルモンの増加により、シミやクスミが増加します。全身的には、疲労、高血圧、動脈硬化、糖尿病、慢性炎症による老化の促進や発がんなども誘発されます。

このような状態を改善するにはどうしたらいいのでしょうか?

ストレスにより炎症反応が起こり、活性酸素の産生が増加していわゆる酸化ストレスがおこるのです。ですから酸化ストレスを改善するために、抗酸化剤を投与するというのがストレスの最大の改善策ということになります。酸化反応とはいろいろな物質から電子を奪い取ること、あるいは酸素が物質に結合することです。対象となる物質に電子を与えることを還元作用といいます。僕らの体の中では酸化反応と還元反応がバランスよくおこり、機能が保たれています。還元作用を持つもの、酸素と結合するのを防ぐ物質を抗酸化剤といいます。抗酸化剤の代表としてビタミンABCやグルタチオンなどがあります。これらの物質はSODやカタラーゼあるいはグルタチオンペルオキシダーゼなどの活性酸素を消去する酵素やNADPHなどの電子供与体と一緒になり、抗酸化反応をシステマティックに行っています。代謝だけでなく紫外線によっても活性酸素を生じやすい皮膚ではビタミンCなど大量の抗酸化剤が存在しています。代謝、紫外線だけでなくストレスによりさらに活性酸素が生じやすくなった皮膚ではこれらの抗酸化剤が不足してしまいます。抗酸化作用をもつビタミンABCやグルタチオンの外用をすることで、皮膚で減少した抗酸化剤を補うことができます。全身でも抗酸化剤が不足しているので、これらの成分の内服も非常に大切です。内服をしないとせっかくスキンケアで皮膚に投与した抗酸化剤が脳や心臓に移動してしまいます。常に血液中を 抗酸化剤でひたひたにしておいて、抗酸化剤によるスキンケアをすることが大切です。ビタミンABCやグルタチオンは交感神経によって収縮した末梢血管の収縮を抑制して血管を拡張させます。また副交感神経にもエネルギーを与えて、末梢血管を拡張します。

生活面では、息を抜けるリラックスできる時間を持つことが大切です。週に1回でもいいから、友人と楽しく話をしたり、趣味の時間を持つことです。食生活では体内の炎症を抑える抗酸化物質も持つ黄緑野菜、かんきつ類、魚介類を腹八分摂取することが大切です。ミトコンドリアはATPの生産工場であり、同時に大量の活性酸素を生じることはよく知られています。実はミトコンドリアは還元作用をもつ物質をも大量に産生しているのです。NADHはミトコンドリアのクエン酸回路でNAD+から産生されます。NADHにリン酸が結合するとNADPHとなります。NADHやNADPHは電子の供与体で、ほかの物質を還元する作用を発揮します。特にNADPHは酸化したグルタチオンを還元するという非常に大切な働きを持っています。運動をしてミトコンドリアで生じる活性酸素が増加しても我々が酸化ストレスにならないのは同時に体内の酸化ストレスをなくすシステムが活性化するからなのです(下図)。

上の図に示すようにストレスで増加した活性酸素を消去するのはビタミンCです。酸化したビタミンCを還元するのはグルタチオンです。酸化したグルタチオンを還元するのはNADPHという電子の供与体です。ビタミンCは体内で合成できないので、外から摂取したりスキンケアで供給する必要があります。グルタチオンはグリシン、グルタミン酸、システインというアミノ酸からミトコンドリアで生じたATPを使用してグルタチオンは合成されます。NADPHはミトコンドリアやペントースリン酸回路で産生されます。すなわち代謝亢進に伴い産生が増加されるのです。これらの産生は運動だけでなくストレスでもある程度増加しますが、ストレスによる酸化ストレスを圧倒するためには、積極的に経口摂取してスキンケアで皮膚に補給することが大切になります。ビタミンABCやグルタチオンは活性酸素を消去するだけでなく、ミトコンドリアを活性するという作用を持っています。すなわち、“代謝を上げて活性酸素を消去する”という作用を持っているのです。ストレスを軽減する以外に皮膚に対しては

皮脂分泌を抑えて毛穴を縮小する、ニキビや赤ら顔を治す、コラーゲン産生や表皮細胞の増殖を促進してアンチエイジングを発揮する、バリア機能を増加させる、炎症を抑え活性酸素の産生を抑制する、皮膚への血流を増加させる、美白作用を発揮するなどの作用を発揮してストレスに負けない肌を実現するのです。 

上は僕がビタミンCのみ外用していた時の写真です(左)。ビタミンABCの外用後(右です)。リフトアップ、美白、毛穴縮小が目立ちます。

さらにグルタチオンやグルタチオンと同じ作用をもつNアセチルシステインを導入すると1時間で目じりのしわが低下して毛穴が閉じ赤みが低下します。

こちらは青山ヒフ科クリニックの外用剤使用前が左、 右はビタミンABCとグルタチオンなどが配合された毛穴レスローション、リフティングエッセンス、VCクリームやセラビオなどを使用した後です。眼も大きくなり、目の下のクマが低下してほうれい線も浅くなっています。右の写真はノーメイクです。美白作用。毛穴縮小作用が目立ちます。 僕もこの方もビタミンの摂取や運動はしています。

上の方は乾燥して毛穴が開いています(左)。ビタミンABCの外用で乾燥はなくなりましたが、まだ毛穴が閉じています(中央)。ビタミンABCとグルタチオンをイオン導入と電子穿孔による導入いわゆるビタミンABCブライトニングコースをしたことろ、さらに毛穴が閉じて赤みがなくなりました。

第7章 ビタミンCはストレスの辛さを低下させ多幸感をもたらすエンドルフィンを増加させます

適度なストレスは人生のスパイスであり、心や体を活性化すると報告しました。

では、なぜストレスがあると、肌がダメージを受け疲れてしまうのでしょうか?

それは仕事がつらい、いやな上司がいるなどのいろいろなストレスを排除すべき異物として認識してしまうからです。

体内に侵入した細菌やウィルスを生体は異物として認識して、炎症反応を起こします。

毛穴に侵入した黄色ブドウ球菌を排除すべき異物を認識すると

毛穴周囲に好中球やマクロファージなどの免疫担当細胞が集結して

活性酸素や蛋白分解酵素あるいはサイトカインを産生して細菌を攻撃します。

その結果最近は除去されます。

おできなどの反応がそれですね。

皮膚へのストレスが紫外線などの物理的ストレスの場合では

紫外線は皮膚に活性酸素を生じます。

紫外線によりダメージを受けた皮膚を修復するために炎症が起こり皮膚は一時的に赤くなります。

紫外線に当たるという行為を継続しなければ、炎症はやがておさまります。

皮膚は一時的に色素沈着(日やけ)を起こしますが、それが一時的なものであればシワたるみまで進行しません。

一過性の物理的なストレスは生体に強いダメージを与えにくいのです。

いやな上司がいる場合を考えてみましょう。

職場で嫌な上司を目にすると、細菌が身体に入った時と同じように、視床下部からCRHというホルモンが分泌されます。

CRHは炎症を起こすホルモンです。

その結果全身に目に見えない穏やかな炎症が起こります。

炎症を抑えるためにグルココルチコイド(ステロイドホルモン)が分泌されます。

仕事の間これらのホルモンが分泌され、闘争や逃走をうながしますが、

実際には仕事を放棄したり、上司と喧嘩することもなく一日がおわり、帰宅します。

自宅に着くころには上昇したホルモンも上がります、

でも次の日に会社に行くとまたホルモンが上昇します。

ホルモンの上昇の間は、血圧も上がり、糖代謝が亢進したミトコンドリアでは活性酸素が大量に生じて

ステロイドを分泌する副腎皮質やアドレナリンを分泌する副腎髄質は疲れ果ててしまいます。

副腎髄質は大量のビタミンCを分泌のために消費します。

そうすると皮膚に分配される予定だったビタミンCも副腎に配送されていまいます。

その結果皮膚のビタミンCが欠乏して、毛穴が開き、にきびができて、バリア機能も低下します。

全身のビタミンCも低下して何となく疲れやすくなり

アドレナリンの分泌も低下してやる気がなくなってしまうのです。

感染症を引き起こす細菌やウィルスであれば、短時間で体内から一掃されて炎症反応は落ち着きます。

ストレスの場合は細菌やウィルスと異なり、毎日長く炎症反応を起こさなくてはならない。

これが感染症による炎症とストレスによる炎症の違いです。

ストレスで休止状態となった副交感神経を優位にするリラックスできる時間、

ストレスで生じた活性酸素を消去するビタミンCなどの抗酸化剤の摂取やスキンケア

そしてストレスに打たれ強い体を作る運動などが必要になるのです。

そして何よりも大切なことは、友人と共に他愛のないおしゃべりをする時間を持つことです。

楽しい時間を持つと多幸感を発するエンドルフィンが増加します。

エンドルフィンは風邪をひいたり、上司にいじめられてつらい時にも出るのですが

ストレスがあるときには圧倒的な辛さに紛れてその楽しさを感じることができないのです。

ストレスがあると中枢や皮膚からPOMCというホルモン前駆体が分泌されます。

それが酵素によって切断されグルココルチコイドという炎症を抑えるホルモンを刺激するホルモン

MSHというメラニン産生を刺激するホルモンや

エンドルフィンという多幸感と疼痛遮断作用を持つホルモンが分泌されます。

紫外線に当たった後は炎症が起こり痛いので、痛みを抑えるエンドルフィンや炎症を抑えるACTHが分泌されます。

そしてMSHにより皮膚は黒くなり、紫外線をブロックするようになるのです。

エンドルフィンが痛みを紛らわせますが、大部分の人はあまり快楽を感じません。

一方スポーツをしたり、音楽を聴いたり、仕事をなし終えたときに達成感と共に

エンドルフィンが大量に分泌され人生の喜びを感じるのです。

一部の人では日光浴をすると気持ちがいいと、日光浴をしたり日焼けサロンに通います。

これは紫外線でもエンドルフィンが多少分泌されるためです。

日光浴の気持ちよさの原因はエンドルフィンなのです。

ストレスの辛さと比例して分泌が増加するのはグルココルチコイド(コルチゾールともいます)。

10人の女性の方にビタミンCを含有するアセロラを飲んでいただいたところ、グルココルチコイドは

大部分の方で低下しています。2割から3割くらい低下した方もいます。

低下しなかった方は3名います。

風邪を引いた方が2名と飲むのが大変だったという方が1名です。

おいしいものをとること、ビタミンCで活性酸素を消去するということがストレスのつらさを抑えます。

アセロラはビタミンCを大量に含んでいます。この時は約1グラム摂取しました。

摂取後ほとんどエンドルフィンの上昇がなかった方は採血のために青山ヒフ科クリニックに

来院しなければならなかったボランティアの方です。

6、9,10の方は非常にエンドルフィンのレベルが上がっています。

6番がアセロラで非常に肌がきれいになった方、9,10の方は青山ヒフ科クリニックと同じフロアにある

ドクターケイの社員で採血のために移動する必要がなかった方です。

ビタミンCはストレスやイライラで増加して、皮脂分泌を増加してニキビやかゆみを起こすサブスタンスP

のレベルを下げることも報告されています。

抗酸化作用を持つビタミンCを摂取することは、ストレス対策に有用です。

飲んでも塗ってもいいのがビタミンCですね。

 

ビタミンABCやグルタチオンを摂取しスキンケアにも使用して、ストレスに負けない豊かな日々を過ごしましょう。