ビューティ・コラムcolumn

第124回 赤ら顔の発症メカニズムとその治療について

慢性の赤ら顔の原因としては、脂漏性皮膚炎、酒さ、そしてアトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎、敏感肌、乾燥肌があります。

アトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎は皮膚に付着したハウスダストやスギなどの花粉を生体に害をなす悪い物と認識して、免疫担当細胞が表皮に入り込んだり、表皮直下に集積して、異物を体外に排出しようとして炎症を起こします。皮脂分泌は一般には普通ないしは低下して毛穴は閉じており、皮膚の薄い眼の周囲や頬などに好発します。かゆみを伴うのが普通です。不適切な化粧品の使用や、洗顔の際の皮膚のダメージでも赤ら顔は生じます。

治療としては、活性酸素を消去するビタミン剤の内服以外に、非ステロイドのかゆみを抑える外用剤やステロイドの外用剤が保険適応で治療可能です。

脂漏性皮膚炎と酒さはストレスなどにより皮脂分泌が増加することで起こります。典型的な脂漏性皮膚炎では黄褐色の痂疲が赤い部分や辺縁に付着し、典型的な酒さでは眼に見えるくらい血管が拡張します。両疾患とも皮脂分泌が亢進しているので、通常は毛穴が開き、重症ではニキビが合併します。両疾患とも発症の初期段階あるいは症状が軽い場合は、臨床症状で見分けることは困難です。両疾患とも皮脂分泌が少ない眼の周囲の皮膚の赤みは少なく、額、鼻、鼻周囲の頬や口周囲のいわゆるTゾーンの皮脂分泌が亢進して、毛穴が開いて赤くなります。

脂漏性皮膚炎と酒さを見分けるポイントは自覚症状です。両疾患が軽度あるいは初期の場合、脂漏性皮膚炎では自覚的な痒みやほてりはなく、時に痒みを感じます。冷たい水で顔を洗ってもひりつくというようなことはありません。

酒さは常にほてりやひりつきを感じ、冷たい水で顔を洗うと痛い、お風呂に入るとすごく熱く感じるなどの症状があります。発症を促すものとして、両疾患ともストレスや体質あるいは食生活の乱れであるいは乾燥肌の補正のため皮脂分泌が増加して発症することが多くみられます。

この二つの疾患が共に皮脂分泌の増加が発症機序の根幹にあると僕は思います。両疾患とも皮脂分泌が多い顔のゾーンに好発し、皮脂分泌が少ない眼の周囲の皮膚では赤みがないからです。眼の周囲の赤みが存在する場合はアトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎など外からの刺激による炎症が合併していると考えられます。あるいはアトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎だけの場合もあると思います。脂漏性皮膚炎や酒さではストレスや体質で皮脂分泌が増加します。過剰な皮脂がアクネ菌や真菌であるマラセチア菌あるいはニキビダニでもデックスが産生するリパーゼという酵素に分解され、生じた遊離脂肪酸が皮膚を刺激して炎症が生じます。酒さでは肥満細胞の過剰活性化やTLRという免疫のセンサー、TRPという温熱のセンサーの過剰活性化、特にニキビダニに対する過剰な免疫反応が原因であるとも報告されています。脂漏性皮膚炎ではマラセチアが生じる遊離脂肪酸が原因とされています。両疾患とも正確な機序はまだ不明です。

なぜストレスが皮脂分泌を促進するのでしょうか? 人はストレスを排除すべき異物と勘違いして、炎症を起こして排除しようとするからです。炎症の結果皮膚のバリア機能が低下してしまいます。それを補正しようとして皮脂分泌が増加して厚い皮脂膜を作り乾燥肌や敏感肌になるのを防ごうとするのです。

上の図に示すように化粧品による接触皮膚炎と脂漏性皮膚炎の症状は非常によく似ています。なぜなら両疾患とも化粧品とストレスという異物に対して炎症という排除反応を起こしているからです。接触皮膚炎は皮膚に付着した化粧品が皮膚から剥がれ落ちるとすぐ治ります。でも脂漏性皮膚炎はストレスがなくならない限りなかなかよくなりません。

上の図のように精神的ストレスを皮膚に付着した異物と勘違いして、炎症を起こし、活性酸素や蛋白分解酵素を放出して、蛋白である皮膚成分と精神的ストレスを一緒に排除しようとしているのですが、ストレスは皮膚には存在しないので炎症を起こしても排除できないのです。

長く継続した炎症により角層はダメージをうけ、皮膚のバリア機能が低下します。乾燥肌や敏感肌になるのを予防するために、皮脂分泌が増加します。その結果脂漏性皮膚炎や酒さやニキビが発症します。炎症は異物を排除するために蛋白分解酵素を血管から皮膚に飛びだした炎症細胞が放出します。そのために血管の内壁に存在うる内皮細胞同士の隙間が大きくなり、炎症性細胞が皮膚の外側に飛びだしやすくなります。

上は平常状態の皮膚と血管です。皮膚には眼に見えない弱い炎症が常に起きていて、内皮細胞同士の間には弱い隙間があり、少数の炎症性細胞が血管の外に飛びだしています。血管内の赤血球が内皮細胞同士の隙間を通して見えるので、皮膚はわずかに赤く見えます。この赤みは正常な肌に見られる健康的な赤みといわれてきましたが、実は皮膚の穏やかな炎症を反映しています。ビタミンABCやグルタチオンなどの抗酸化剤を投与すると消失します。抗酸化剤の内服やスキンケアを赤ら顔が消失しても継続している方は、皮膚の透明感が増加して、くすみ、シミ、シワ、タルミも抑制されます。皮膚の赤みは慢性的な炎症を反映しており、これを消失させることがアンチエイジングにつながります。

ストレスにより皮膚に炎症が生じると、多数の炎症性細胞が皮膚の外に飛び出して、蛋白分解酵素や炎症性サイトカインを放出します。この際に内皮細胞同士の隙間が広がり多数の赤血球が皮膚の外側から見えるようになり皮膚は赤くなり、赤ら顔の原因となります。

ビタミンABCやグルタチオンなどの活性酸素を消去して炎症を抑制する抗酸化剤を大量に皮膚に投与すると、皮脂分泌低下、炎症抑制と同時に、内皮細胞同士の隙間が低下して、皮膚の外側から赤血球が見えなくなり、皮膚は白くなります。抗酸化剤による赤ら顔の治療の最大の利点は炎症を起こす原因である皮脂分泌の増加を抑制、炎症を抑制、赤ら顔を抑制この3点を同時に発揮することです。炎症で内皮の隙間が開いた 状態が長く継続した場合、ひとつひとつの血管が眼に見えるほど太くなります。この場合は抗酸化剤の投与では無理で、赤に反応するレーザーを使用して、血管を消滅させる必要があります。青山ヒフ科クリニックでは、ジェネシスおよびグリーンジェネシスを用意しております。

 

脂漏性皮膚炎について

脂漏性皮膚炎は過剰な皮脂が、皮膚に常在する真菌(カビ)であるマラセチア菌や、アクネ菌の放出するリパーゼという皮脂を分解する酵素によって、オレイン酸などの遊離脂肪酸が大量に生じ、それが表皮細胞内を刺激して大量のカルシウムイオンの流入を起こすことが大きな原因といわれています。マラセチアに対する抗真菌剤が無効な方でも、ビタミンABCを用いて皮脂分泌を抑えて、活性酸素を消去すると大半の方では治癒します。 遊離脂肪酸のもとは皮脂ですから皮脂分泌を抑制することが治療の根本です。ビタミンABCやグルタチオンなどが皮脂分泌を抑制して、脂漏性皮膚炎を軽快あるいは治癒させます。皮脂分泌を亢進させる高糖質食高脂質食を改め腹八分の食事をすることや、ストレスを減らす工夫も大切です。

 

酒さについて

酒さでは肥満細胞の過剰活性化やTLRという免疫のセンサー、TRPという温熱のセンサーが原因であると報告されています。ニキビダニ(デモデックスという原虫です)に対する過剰な免疫反応が酒さでは報告されています。 酒さの場合、皮脂分泌の少ない眼の周囲の皮膚の赤みは少ないので、皮脂分泌の増加が酒さの増悪因子であることは間違いありません。仕事中などにチョコレートを食べていつも顔がほてる酒さを発症した方たちは、腹八分の食事や高糖質、高脂質の食生活を避けるようにしただけで、数か月で治癒した方もいます。

一方、ビタミンABCの外用でイオン導入をしても全く良くならず、ニキビダニを退治するための抗原虫剤の外用(ロゼックス、イオウローション)や内服(フラジール)をしても良くならない方がいます。ビタミンABC以外に蛋白分解酵素の阻害剤であるトラネキサム酸の外用や導入をしたら軽快した方もいます。酒さの場合、皮脂分泌の過剰だけでなく肥満細胞の過剰活性化を含む皮膚の慢性炎症、精神的ストレスによるサブスタンスPなどの肥満細胞の活性化や表皮細胞の炎症サイトカインの分泌や痛みを引き起こす神経ペプチド、温度センサーであるTRP( transient receptor potential)による細胞内への過剰なカルシウムイオンの導入による炎症の惹起など、さまざまな要因が発症に関与しています。なかなか治りにくい疾患ですが、食生活の改善、ストレスを減らす工夫、抗酸化剤や抗原虫剤により治癒した方もたくさんいます。あきらめないで治療することが大切です。

上の左は酒さ、右は脂漏性皮膚炎ですが、ともにTゾーンを中心に毛穴が開いて赤くなっていて、臨床的な区別はつきません。左の方は自覚的に常にほてりを感じ、洗顔の際などに顔の痛みを感じます。左の方は皮膚を調べるとニキビダニ(デモデックス)陽性で抗原虫剤であるメトロニダゾールの外用(ロゼックス軟膏)と内服(フラジール)で軽快しました。脂漏性皮膚炎の方はビタミンABCの外用とイオン導入で軽快しました。両疾患はきれいに分かれるのではなく、発症機序として二つの疾患が混じりあっている例もあります。酒さの患者さんの25%くらいの方が脂漏性皮膚炎を合併しているという報告があります。両疾患共にニキビを合併することもあります。なぜなら酒さ、脂漏性皮膚炎、ニキビは共に皮脂の過剰分泌が関与しているからです。アトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎を合併している方も多数います。酒さにはこの薬、脂漏性皮膚炎にはあの薬ということだけでなく、患者さんの症状に応じていくつかの治療薬や治療法を柔軟に組み合わせていくことも大切です。またニキビダニに対しては、イオウローション、メトロニダゾールゲル(ロゼックス軟膏)メトロニダゾールの内服(フラジール) 抗原虫薬としてイベルメクチンがあります。イベルメクチンはコロナに対して有効であるとも報告されています。抗炎症作用を発揮するダプゾン(レクチゾール)も有効です。

これらの外用剤はすべて自費になりますが、青山ヒフ科クリニックでは多彩な酒さ用の薬剤やトリートメントを用意しております。

酒さと脂漏性皮膚炎を合併していると思われる場合には、ビタミンABCやグルタチオンなどの皮脂を抑える抗酸化剤に加えて、抗真菌剤を愛用することもあります。ステロイドは脂漏性皮膚炎の治療で保険適応ですが、ステロイドは急性期の炎症を抑える事は出来ても、長期に使用すると皮脂分泌は増加してニキビや酒さが悪化するので青山ヒフ科クリニックでは使用しません。ステロイドはさらに免疫細胞のアクネ菌のセンサーである TLRを過剰活性化して、ニキビを悪化させるだけでなく、皮膚に依存症を生じます。

上の脂漏性皮膚炎の方は毛穴レス美白ローションを外用して軽快しました。

上の方は仕事が忙しく鼻の横が赤くなり、脂漏性皮膚炎を診断されてステロイドを処方され悪化して当院を受診された方です。鼻の横から赤い部分にかけて白黄色の鱗屑や痂疲(かさぶた)が付着している典型的な脂漏性皮膚炎です。ステロイドの外用を中止してビタミンクリームを外用して1か月で軽快治癒しました。

上の方は常に顔にほてりを感じている酒さの方です。当院を受診する前に赤みを減らすレーザーを何回も照射したがよくならないと受診されました。仕事の合間にチョコレートを食べる習慣をやめていただき、高糖質かつ高脂質の食事を改善して、常に腹八分の食事をするようにしつつ、ビタミンABCのスキンケアとイオン導入を行い、2か月後には軽快治癒しました。ひりつきは全くありません。

上は脂漏性皮膚炎の方ですが毛穴引き締めホワイトエッセンスを外用しました。7日後には赤味が低下して毛穴が閉じています。

PQQはビタミン様物質で酸化還元機能を制御して代謝を促進します。PQQはシミやしわに対するアンチエイジング作用が注目されていますが、抗炎症作用を発揮して赤味を低下させて毛穴を縮小します。上の方はを配合したアンチエイジングローション外用たった7日で顔の赤みが低下して顎のニキビも軽快しています。

 

上の方は脂漏性皮膚炎の方ですが、グリーンジェネシスを照射しました。照射1回で毛穴は閉じ、赤味は大きく低下しています。

上は酒さの方です(左)。ビタミンとトラネキサム酸のスキンケアとイオン導入で軽快しました。

青山ヒフ科クリニックではビタミン剤やトラネキサム酸の内服などは症状により保険適応で処方しています。抗酸化作用を発揮する外用剤は下記があります。

 

▶外用剤(保険適用外です)

ビタミンCローション、ビタミンCクリーム(ビタミンC配合)

毛穴レスローション(ビタミンC、ビタミンB群、甘草エキス、各種植物エキス配合)

毛穴レス美白ローション(上記にグルタチオン配合)

毛穴引き締めエッセンス(カフェイン、トラネキサム酸、アミノ酸、ポリフェノール配合)

 

▶内服(スピノロラクトン以外は症状により保険適用です)

ビタミンC、ビタミンB群、ハイチオール(アミノ酸)、抗生物質、漢方薬

 

▶エステトリートメント(保険適用外です)

ビタミンCイオン導入、そのほかビタミンABC、グルタチオン、トラネキサム酸

カフェインなどのイオン導入やノンニードル導入

 

▶レーザー治療(保険適用外です)

赤みに対するレーザー治療として ジェネシスやグリーンジェネシスを用意しております。